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2014.09.29 (月)

平成25年(ワ)第31341号特許専用実施権侵害行為差止等請求事件 判決の要約及び解説

平成26年9月25日
村松国際特許事務所
弁理士 村松 義人

原 告 有限会社ホール・ワークス
被 告 株式会社スリーストン

1.判決

 原告の請求※1をいずれも棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。

2.原告の請求

 1.被告は、被告製品を製造し、販売してはならない
 2.被告は、被告製品を廃棄せよ
 3.被告は、原告に対し、400万円及びこれに対する平成25年12月13日から支払い済みまでの年5分の割合による金員を支払え

3.事実及び理由

3-1.文言侵害は生じない

 株式会社スリーストンが製造販売する製品(被告製品)と、原告が専用実施権を有する特許第4910154号(本件特許)の請求項1記載の発明(本件発明)との間には、相違点1~5という5つの相違点が存在する。
 したがって、被告製品は文言上本件発明の技術的範囲に属しない※2。そしてこの点については、原告と被告との間に争いはない※3

 上記相違点1~5のうち、相違点3、4のみを以下に示します。

(相違点3)
 構成要件D3※4に ついて、本件発明は、スライドベースの固定用垂直面に縦長小判穴が設けられ、スライドボルト支持用垂直面に縦長穴が設けられ、そこに保持されたスライドボ ルトが上下方向に移動可能に保持されるのに対し、被告製品は、上下方向に移動不可能に軸支したスライド用ボルト114を備え、スライドタップ115が仕舞 われたケース117がバネ117Cによる上向きの付勢力に抗した下向きの外力が与えられることにより下方に移動可能とされている点。

(相違点4)
 構成要件D4※5に ついて、本件発明では、「スライドタップ」がスライドベースの底面中央開口に吊り下げ状態で取り付けられるのに対し、被告製品では「スライドタップを収納 したケース」がケース蓋117B下面とスライドタップ115上面との間に配置されたバネ117Cを介してスライドベース部112Aと後板111Bとに囲ま れた開口部に吊下げ状態で取り付けられている点。

3-2.均等侵害※6は生じない

 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するなら、それは均等侵害が成立する場合のみであり、原告は均等侵害の成立を主張する。
 しかしながら、①被告製品には本件発明に存在しない部品が用いられ、ケース117及びスライドタップ115の設計が必要となるが、②その半面、パチンコ 台アセンブリの前面からスライドタップ115を前後に移動することでパチンコ台の傾斜角を調整することができるという付加的な効果が得られている。他方、 ③パチンコ台取付装置を含む技術分野において、相違点3及び4に係る技術が被告製品の製造の時点で公知であったと認めることはできず、また、④単に本件発 明の構成要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置換えたりするだけで、被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構成することは 困難である。
 特に上記④に関して言えば、被告製品は、スライド用ボルト114が移動不可能に軸支されているという点で本件発明とは基本的構成を異にするものであるとさえいえる。
 つまり、被告製品は、均等侵害の第3要件を欠き※7、本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するとは言えない。

3-3.まとめ

 被告製品は、本件発明との間で、特許権侵害は生じないから、原告は被告に、被告製品の差止を求めることもできないし、損害賠償を求めることもできない。

以上

※1 原告の請求は、「2.原告の請求」に記載の1~3です。判決では、そのすべてが退けられ、また訴訟費用も全額原告が負担すべきとされました。
※2 特許法上、ある製品の実施(製造、販売等)が特許権の侵害を構成するには、当該製品が、特許発明の技術的範囲に属することが原則として必要となります。ま た、ある製品が、特許発明の技術的範囲に属すると言えるには、当該製品が特許発明のすべての発明特定事項(構成乃至要件)を充足することが必要となりま す。ある製品が、特許発明のすべての発明特定事項を充足することを「文言侵害」が成立すると言いますが、相違点1~5という5つの相違点が本件発明との間 に存在するので、被告製品は本件発明との間で文言侵害を生じません。つまり、被告製品は原則として、本件発明の技術的範囲に属さないという結論になるとと もに、被告製品の実施は原則として、本件特許権の侵害を構成しないという結論になります。
※3 被告製品が本件発明との間で文言侵害を生じないことを、原告も認めています。
※4 構成要件D3は、本件発明のうち、「スライドベースの固定用垂直面の縦長小判穴とスライドボルト支持用垂直面に形成された縦長穴にボルトハンガーで前後移動が規制され上下方向に移動可能に保持したスライドボルトと、」という内容です。
※5 構成要件D4は、本件発明のうち、「スライドボルトに螺合されスライドベースの底面中央開口に吊下げ状態で取付けられスライドボルトの回転により前後に移動可能なスライドタップと、」という内容です。
※6 文言侵害が生じない場合、つまり被告製品が本件発明の一部の構成を他の構成に置換した場合であっても、下記5つの要件のすべてが充足される場合には、被告 製品は本件発明と「均等」であるとして、均等侵害が成立します。均等の5つの要件は以下のとおりです。(1)対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部 分ではないこと。(2)相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること。(3)相違 部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において容易に想到できたこと。(4)対象製品等が、特許発明の出願時におけ る公知技術と同一、または公知技術から容易に推考できたものではないこと。(5)対象製品等が特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外 されたものに当たるなどの特段の事情がないこと。
※7 均等侵害は、5つの要件がすべて充足されたときにのみ成立します。しかも、本件では、相違点は5つ存在するので、その5つの相違点のすべてについて、均等 の5要件がすべて充足されない限り(即ち、5×5=25個の原告の主張のすべてが認められない限り)、被告製品は本件発明との間で均等侵害を生じません。 裁判所は、相違点3、4について、均等の第3要件を充足しないとの判断を示し、この1点のみから本訴訟で均等侵害が成立しないことは明らかであると断じて います。裁判所は、同相違点について均等の第1要件についての判断を示しているもののその余の点については、必要がないので、判断を行うことすらしていま せん。

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